シークレットな関係
「きゃっ」
バランスを崩して咄嗟に手をついて見上げると、間近にあった高橋の目がギラリと光っていてコクリと息を飲む。
思い出した、この顔は心底怒っている時のだ。
子供の頃、みんなから「魔神」って恐れられていたっけ。
捕まえられた腕がすごく痛いけれど、怖くて文句が言えない。
「あんなところで泣かれたら、こうするしかねえだろうが。本当に、迷惑な奴だ」
「ご、ごめんなさい。感情が抑えられないなんて、まるで子供だよね。・・・約束の相手って、彼女?私のことは気にしなくてもいいから」
「そんなんじゃねえよ・・・ここ一年くらい女はいない。まあ、そんなに大事な用事じゃねえから、安心しろ。久しぶりに会った幼馴染と過ごすのもいいだろ」
もう一度謝ると手を離してくれたが、不機嫌な顔のままだ。
無言の二人を乗せて走るタクシーは大通りから外れて住宅街の中に入っていき、やがて和風な造りの建物の前で停まった。
門があって一見普通の民家みたいだけれど、店名の書かれた大きな提灯が掲げられてて料亭だとわかる。
「突然来てすみません。空いてますか?」
尋ねる高橋に、和服の店員は少々お待ちくださいと言って奥に引っ込んでいった。
正面に松の描かれた衝立が置いてあって、まるで武家邸みたいな入り口だ。
思わず口を開けたままキョロキョロ見回してしまう。
パッと見た感じは一見さんお断りのお店っぽい。
こんなところを知ってるなんて、高橋はどんな生活をしているのだろう。