シークレットな関係
大野さんが去るとすぐに高橋から書類を渡された。
今の話が聞こえていたのか眉間にしわを寄せていてご機嫌斜めだ。
昔の話をするなと、あとでしっかり怒られるかも・・・覚悟しておこう。
いつものように貼り付けられた付箋には『七時 いつものカフェ』とあるけれど、今日は行きたいところがある。
事務所に顔を出すことを付箋に書いて書類を返すと、彼は無言のまま付箋を破いてごみ箱に捨てた。
暫く待っていても何の反応もくれないので、今夜は仮恋人の時間はナシと伝わったと判断して仕事に勤しむ。
パソコン画面とにらめっこしていると、デスクの上にトンと大きな手が置かれた。
その長い指先が一枚のメモ用紙をコンコンと弾く。
その手をたどって見上げると、高橋が鞄を持って立っていた。
「ここだ。いいな」
「・・・へ?」
「それが終わってからでいい。必ず、今日中だ」
「はい・・・」
「よし。俺は外出してそのまま直帰する」
あとはよろしくと部下の男性社員に声をかけて、高橋は外に出ていった。
メモ帳には地図と住所が書かれていて、丁寧に線が引かれて所々に目印があり、結構細かい。
駅マークから近い場所にある四角いマークに謎の六桁の数字・・・これは、高橋のマンション?
この数字は何?と訊きたくても、彼は既に会社の外。
「・・・行けばわかるのかも」
メモを誰にも見られないうちに、そそくさとバッグの中に仕舞った。