シークレットな関係

高橋のいないオフィスは、なんとなく空気が軽い。

隣からの圧力を感じずにする仕事は気楽でいいけれど、ピリッとした緊張感が薄れて張り合いがないのも事実。

彼の存在感は半端じゃなく、私もそんなオーラを醸し出してみたいと思う。

勿論、女優としての、だけど。


「何をしてるんだ!あれは大事な資料だぞ!?」

「すみません!!」


突然オフィスに怒号が響いて驚きながらもそちらを見ると、隣の課の課長の前で必死に頭を下げる女子社員の姿があった。

あれは、笹山さんだ。何があったんだろう。

気になるけれど聞いてはいけない気がして、耳に入ってくる会話を右から左へ流していると、その中に高橋の名前が出てきて一気に意識がそちらに向いた。

どうやら彼が関係しているみたい。

よく見れば、高橋の部下の男性社員も困り果てた顔をして件の二人のそばに立っている。


「あの、どうかしたんですか?」


泣きだしそうな顔をしている大野さんに尋ねると、高橋に戻すはずだった書類をあちらの課で失くしてしまったという。

しかもそれは高橋が取引先からもらってきた資料らしく・・・。


「でも私、確かに課長のデスクの上に置きました」

「確かか?私は見てないぞ」


二人の押し問答が続いていて、それをオロオロした様子で見ている女子社員が一人いることに気が付いた。

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