シークレットな関係

唯一変わってるのは、壁に貼られたポスターがほとんど宇津木晴香になってることだけ。

『今、恋してます!』のキャッチフレーズのあるポスターは今度始まる連続ドラマのものだ。

動物園の飼育委員の日常と同僚との恋を描くものっぽい。


「漫画のヒット作がドラマ化、か。これの撮影だったんだ」


デスクの上には原作となった漫画の本が置いてある。

その横に、ヒロイン募集!の文字が躍る冊子を見つけ、心が跳ねた。


「これ・・・」


震える手で取り上げてみると、映画のヒロインオーディションの募集案内だった。

要項には、素人、新人、大歓迎とあって、主に新人発掘を目的にしているよう。

ドキドキしながらページを捲っていたら、社長室の方から物音が聞こえてきて慌てて背中側に隠した。

まだ社長がいるんだ。

挨拶に行こうとしたらドアが少し開いて、話し声が漏れ聞こえてきた。


「じゃあ、宇津木で調整入れてみます。連ドラの撮影と被りそうですが、なんとかしましょう」


そう言って中から出てきたメガネの男性は、私の苦手な人だった。


「葛城専務・・・お久しぶりです」

「来ていたのか。仕事なら、ないぞ。帰れ」


冷たい言い方で胸が締め付けられる。

でもここでくじけてなんていられない。

頑張ると決めたのだから。


「・・・だから、お願いに来たんです。このオーディション受けさせてください!」


背中に隠していた冊子を前面に出して頭を下げると、葛城専務は「見つけたのか」と言ってため息をついた。

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