シークレットな関係

「残念だが、それは宇津木でいくとたった今決まったところだ」

「でも、一つの事務所で一人の応募とは決まってないです。それに新人推奨のようですし、だから、お願いします!」

「駄目だ。帰れ。何かできる仕事があったら回してやるから。まったく、社長の情けでアダルトに売られないだけでもありがたいと思え」


苦々しく言って私の手から冊子を取ろうとするので、奪われまいと指に力を籠める。


「じゃあ、このオーディション、個人で応募してもいいですか」


駄目もとで訊くと、葛城専務は冊子を奪うのをやめて鼻で笑った。


「・・・それは、事務所を辞めると受け取っていいのか。俺は止めないぞ」

「そ・・・それは、辞めたくない・・・です」


子役のころから所属してきたここには愛着があるし、アダルトいきをストップしてくれた社長にも恩義を感じている。

今は名前だけの契約に落ちて仕事も報酬ももらえなくても、離れるのは勇気が要る。

事務所の後ろ盾がないと全部が一身にかかってくるし、人気絶頂ならばともかく干された私には独立なんて難しい。

今より状況が悪化して、引退するも同じだ。


「個人で勝手に応募というなら、そうなるぞ。どうする?」

「社長とお話しさせてください!」

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