シークレットな関係
葛城専務の光るメガネと冷徹な物言いに負けないよう精一杯の気迫を込めて詰め寄ると、社長室の中から声がかけられた。
「誰か来ているの?葛城、入ってもらって」
「はい、わかりました」
う~と唸った後苦々しげに「入れ」と言われて社長室のドアを開けると、社長は笑顔を見せてくれた。
ふくよかな顔にショートカットの女性社長は、前と変わらずに優しかった。
「まあ、ももちゃんじゃないの。久しぶり、元気にしてた?」
「はい。社長、なんとかやっています」
「『茜色のロマンス』のあと、仕事があげられなくてごめんね。ももちゃんを守るので精一杯だったのよ」
私の芸名は『桃瀬さくら』。
名付け親はこの社長で、子役時代はすごくかわいがってもらっていた。
この方は、私が中学生になって一旦活動中止したあともマメに連絡くれたりしていたのだ。
事務所を守るために苦渋の決断をしたのだろう、責めることなんてできない。
「・・・はい。ありがとうございます」
「だけど・・・もうそろそろ出てもいいころかもしれないね」
「え?それって・・・」
「ももちゃん、すごく綺麗になってる。今、恋してる?」
「あ・・・はい。してます」
「そう、それはよかった。葛城、入って頂戴!」