シークレットな関係
夜空に向かってそびえるマンションを見上げる。
「ここ、だったっけ?」
前に来たのは昼間で、夜の今とは雰囲気がまるで違って見える。
確認しようにも、彼の電話番号を知らないことに気が付いた。
二人は契約の間柄で、期間が終われば無関係になるのだと、改めて突きつけられる。
許されるなら契約最後の日に、電話番号を聞こうかな。
勿論、幼馴染として・・・。
地図に載ってる謎の数字をエントランス横の機械に打ち込んでみると、カチッと鍵が開くような音がした。
再び閉まらないうちに素早く入り、高橋の部屋まで向かう。
ベンジャミンのあるところを探してインターホンを押すと、すぐにドアが開いて高橋が顔を出した。
「ごめんなさい、遅くなりました」
すると早く入れとばかりにグイッと手を引かれてよろめいた私は、自然に彼の胸に飛び込む形になった。
そのまま腕の中に閉じ込められて、彼の指が私の髪をいじっている。
「高橋、あの?」
「櫻井、今日のヘアスタイルは、事務所に行くためか」
「うん、頑張ってセットしたの。・・・おかしいかな?」
「そんなことねえけど。俺はストレートのほうが好きだ」
私から腕を離してリビングまで行く高橋の背中を追いながら、彼との契約期間中は髪を巻くのはやめようと決めた。
「で、どうだった?何か言われたか」
「最初は『帰れ』って言われた。でもね、すっごく粘ったら、オーディションを受けられることになったの!ほら、これ!」
バッグの中から冊子を出して見せると、彼はパラパラ捲りながら「恋愛ものか?」と訊いた。