シークレットな関係
「うん、そう。実はここに来る前に駅の本屋さんで見つけたの。これが原作」
「へえ『恋味レシピ』ね。なんか料理本みたいだな」
「うん、でも小説なの。あらすじを読むと、料理研究家のヒーローとその助手がヒロインの恋愛物語なんだ。このヒロインの、オーディション」
「そうか。じゃあ、ますます男に慣れておかないとな。台詞の練習相手にもなってやるよ」
「ありがとう。嬉しい!じゃあ、ピックアップするね!」
「それは明日。今日は溺愛してやる」
彼が私の腰をぐっと引き寄せて頬に触れてくる。
その優しさに胸がキュンと震えて、瞳に涙が貯まるのが分かる。
『俺に惚れるな』なんて、無理。
この人にこんな風にされて、惚れない女なんているの?
でも・・・私に向ける優しい瞳も、合せてくる唇もすべて偽りのもの。
多分彼は、私の中に自分の好きな人を重ねている。
期間限定と分かっていることだけど、それでも今はこの腕に包まれていたい。
気持ちを隠して契約を続ける私は、ズルイ女だ。
離れていく唇を名残惜しく思っていると、ふわりと体が浮いて、気づけばソファに座った彼の膝の上にのっていた。
「え、え、ちょっと、高橋?」
「俺が巻いた髪が嫌いなのは、こうして後ろから抱き締めたとき、髪が鼻をくすぐるから。あと、くしゃくしゃに乱すと後が困るだろ?」
お腹に回った腕が締め付けられて、彼の顎が右肩に触れて心臓が跳ねた。
「乱すって、どう・・・?」
「ん?わからんのか。なんなら試すか?俺は、いつでも構わないぜ」