シークレットな関係
お腹にある腕の締め付けが強くなり、首にキスをされてゾクッと体が震える。
思わず声を漏らすと、突然くるりと視界が動いて背中がクッションの柔らかさに触れた。
高橋の真剣な顔が上にあって壊れそうなほどに心臓が脈打つ。
本気、なの?
本音は彼に抱かれたい。
このまま流されてしまおうかとも思う。
けれど愛がないのは、きっと虚しさだけが残る・・・。
「ま、待って!」
近づいてきた彼の顔を、手のひらで受け止めた。
「なんだよ・・・」
不機嫌そうな声がするから、怖くて手を離すことができない。
それにどうしてなのか、高橋もそのまま動かない。
すごく怒ってる?
「あ、あのさ、私、高橋に報告することが、もう一つあるの。聞いて」
彼が体を起こして座ったので、ソファから滑り降りてサッと身なりを整える。
「報告って、何」
「それは、今日会社であったことなんだけど」
隣の課で資料がなくなった事件を話していくと、憮然としていた高橋は次第に会社モードの顔に変わった。
「わかった。櫻井、よく見つけてくれたな」
「たまたま知っていたから・・・ラッキーだったの」
「あの課長は社長の叔父なんだ。だからちょっと問題があってもあのポストからは動かないだろ。下がることも昇進することもない。ま、明日俺からも課長に話をしておくから。そしたら改善も進むだろ」
「お願いします」
そっか。若い社員たちの中で一人だけアラフィフなのは、そういうことだったんだ。
笹山さんたちが働きやすい職場になるといいな。
その後彼は触れてくることはなく、とりとめのない話をして、彼が呼んでくれたタクシーに乗って家に帰った。