シークレットな関係

そんなことがあってから二日後の夜。

私は笹山さんたちと一緒にちょっと変わったお店に来ていた。

ぽつぽつとまばらに立つ住宅地の中に『おでん』と書かれたのれんのある屋台があり、テーブルと椅子が五セットほど並べられている。

ちゃんと照明も設置されていて、ごくごく小さなビアガーデンって感じだ。

屋台からは食欲をそそる出汁の香りが漂ってきて、お腹の虫がグ~ッと鳴った。


「じゃあ、とりあえず乾杯しよ!」


大野さんの合図で生ビールのジョッキをカチンと合わせ、無言でごくごくと喉を鳴らした。


「かーっ、うまい!やっぱり仕事上がりのビールはいいね!」


笹山さんが満足げに言ってジョッキを置くと、大野さんが後に続く。


「そうそう、特に今日なんて最高に気分がいいよね!」

「この間櫻井さんにスカッとさせてもらって、更に今日の高橋課長!あのかっこよさったら、惚れちゃった女子多いんじゃない?」


最後に宮田さんがそう言うと、大根をつまんでいたふたりが口をはふはふさせながらうなずいた。


「高橋課長への注目度が120%アップ!」

「もともと注目株だったもんね。ライバル多いー」


みんなが言ってるのは、今日の二時頃に起こった出来事。

普段通りに仕事をこなしていると、隣の課から叱責の声が聞こえてきたのだ。

課長は書類の間違いを指摘していたけど、小言が続いて、そのうち人格否定にまで至った。

また始まった・・・と思っていたら、舌打ちをして立ち上がった高橋がスタスタと近づいて行って、課長に言ったのだ。


『小言を並べる前に、あなた自身が見本を示すべきです』


たった一言だけどそれが利いて、課長はすぐに黙った。

そのあとデスクに戻っていく高橋を見る女子たちの目がハートに見えたのは、私だけじゃなかったみたい。

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