シークレットな関係
「・・・高橋」
「俺の連れに何か用ですか」
左腕が私をかばうように伸びていて、背中からは怒りの気を感じる。
出された声も、今まで聞いたことがないくらいに低かった。
こんな高橋、初めて見る。
「いや、彼女が泣いていたんで。気になっただけなんで!」
「余計なお世話だけど、優しくしてやって!」
二人組は、喧嘩は駄目だよ!と言って逃げるようにコンビニの中に入っていく。
それを見送ったあとに振り向いた彼は、怪訝そうな顔をして私の頬に触れた。
「喧嘩?どういうことだ、櫻井」
そんな優しい声を出して、そんなに気遣わしげに触れないで。
甘えたくなる。
抱きしめてほしいと思ってしまう。
「あ、それはその、全然勘違いで・・・泣いてるのは、オーディションドラマのヒロインの気持ちに同調してみたら、つい。あの人たちに説明できなくて、ごめんなさい」
咄嗟に吐いた嘘に彼は納得したようで、「別に謝ることじゃねえよ」と言って私の手からレジ袋と傘を奪った。
そのまま何も話さずマンションまで歩く。
高橋は今何を考えてるんだろう。
私には、ひと欠片も恋心はないのかな。
契約だから優しくしてくれるの?
訊きたいことはわき水の如く溢れるけれど、口に出す勇気がない。
こんなとき恋愛ドラマのヒロインなら、どう行動するんだろうか。
『茜色のロマンス』ではヒロインはヒーローに告白されていた。