シークレットな関係

独り暮らしで病気になるとすごく心細くて、大野さんの優しさがありがたい。

お言葉に甘えてリンゴを一つリクエストし、アパートの住所を教えた。


風邪薬を飲んで、ベッドに横たわると昨夜の高橋の顔が浮かぶ。

私が「好き」って言ったときは驚いたというよりも、信じられないと言いたげな顔をしていた。

私が休んだこと、どう思ってるかな。

昨日の今日だから、仮病だと思ってたりして。

でも気まずいことは確かで、彼の顔を見ずに済むのは心の傷を癒すためにもいいかもしれない。

明日には、身も心も快復してるといいな。

そして、恋人契約も告白も何もなかったかのように振る舞いたい。

まだ派遣契約は残っているのだから。



「・・・ん」


枕元に置いてあるスマホのバイブ音で目が覚めた。

カーテンから漏れてくる光は強く、まだ昼間だと思える。

スマホの時計を確認すると午後二時。

薬のお陰か頭痛も治まっていて、熱も下がっている気がする。

熱を測りながらスマホのメールをチェックすると、メルマガの間に事務所からのメールを見つけた。

日付は今日で、お昼休みの時間に送られてきている。


『一応書類審査は通過した。オーディションの詳細を封書で送るから確認しろ。まあ精々頑張れ。PS.勿論宇津木も出るから』


嬉しいけれどもイヤミな文面で微妙な気分になる。

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