シークレットな関係

高橋と思いが通じ合って一か月以上が経った。

派遣期間は二週間前に終わり、大野さんたちに惜しまれながらも契約終了した私は完全無職だ。


「ん、今日もいい天気」


朝の五時半、鳥の囀ずりを聞きながらいつものコースを走る。

まだ人通りの少ない道を走るのは、空気も景色も独り占めしているようですごく気持ちがいい。

川まで往復で約二キロ、いい具合に息が上がった頃河原につくので、そこで一息ついて基本の発声練習をする。

朝の澄んだ空気に凛と響く声は、今日も絶好調な手ごたえを感じて気力がみなぎってくる。

思わず対岸に向けて叫んだ。


「がんばるぞー!見てろよー!葛城専務ー!!」


思い切り声を出してスッキリし、アパートに戻って軽くシャワーを浴びて汗を流した。


「今日は和食にしようかな」


厚焼き玉子にお味噌汁。

鼻歌混じりで朝ごはんの支度をしていると、ふわりと後ろから抱きしめられ、びっくりしたけれど幸せを感じた。


「おはよう。いい匂いだな。食べたくなる」

「もう少しでできるから待ってて」

「違う。いい匂いはこっち」

「や・・・」


首筋にキスをされてゾクゾクと体が震え、お玉を落としそうになる。


「火を使ってるのに、危ないでしょ」


< 88 / 119 >

この作品をシェア

pagetop