シークレットな関係
注意しつつ振り向くと、すかさず濃厚なキスをされてジョギングとは違う意味で息が上がった。
ちゅぽんと音が鳴って離れていく彼の目には、上気した頬の私が映っている。
「今日はオーディションの日だろ。これで許してやる。声が枯れるといけないからな」
高橋は、甘い獣だ。
付き合い始めてから私の部屋に泊まることが多くなり、そんな日は夜も朝も彼に泣かされてしまう。
十五年プラスアルファの思いの分だけ濃厚で激しく、思うがままにされる私は毎回ヘロヘロになるのだ。
でも彼に言わせれば加減しているらしく、もしも制限がなかったらどうなるのか考えるだけで恐ろしい。
「いってらっしゃい」
「今日は遅くなるから、ここには寄らない。オーディションは付いていってやれないけど、後悔の無いようにしっかりがっばってこい」
「うん。ありがとう。実力が出せるようにがんばる」
彼が仕事に行くのを見送り洗濯物を干したあと、私も身支度を始める。
今日のオーディションは、十時に受付が始まると案内に書いてあった。
会場となる会館まで一時間はかかるし、方向音痴な私は早目に家を出ないと不安だ。
「今日の占いは『上を向けば探し物が見つかるかも』か・・・ラッキーカラーは赤」
高橋は占いなんかに頼らず現実だけを見ろと言うけれど、まだ暫くは止められそうにない。
だって、ずっと習慣だったことだもの。