シークレットな関係
赤いハンカチをバッグに入れ、オーディションの案内も入っているのを確認し、準備万端いざ出発だ。
少し迷ったけれど無事に会場に着いて受付を済ませ、番号札を受け取った。
案内に従って控室に入ると、葛城専務とバッタリ会ってしまった。
私だとわかった途端、メガネの奥が渋く光る。
そうだ「男難」とは高橋のことではなく、きっと専務のことに違いない。
「来たのか」
「当然です」
「ま、何事も参加することに意義があるっていうしな。負け戦と分かっていても来たことは褒めてやる」
「負けと決まっていません」
宇津木晴香と同じ事務所の一員なのに、干されて落ちぶれた私には情など少しもわかないらしい。
専務としては、お金を産まない名前だけの女優桃瀬さくらには、一刻も早く終了宣告をしたいのだろう。
ふいっとそっぽを向いて出ていく専務に心の中でパンチをおみまいし、控え室の中を見回した。
全部で三十人以上はいる。
私のあとにも受付を済ませた人が入ってきて、まだまだこれから増えていく。
素人歓迎のうたい文句で募集されたにもかかわらず、参加メンバーには宇津木晴香以外にも名前を知ってる女優がチラホラいる。
ヒロインは有名女優を押しのけ、応募総数何人の頂点!という話題を作りたいのだろうか。
それには素人の方がマスコミは食いつきそうだけれど。