どうすればいいのかわかりません!
呆然と見上げていたら、工藤さんは背後を指差した。

「一緒に座りましょう」

……いきなり座りましょうと持ちかけて来る男。とても独特な人だ。

美保と目を合わせると……彼女はニコリと微笑む。

「喜んで」

喜んでついていくんだ。

美保に促されるまま工藤さんについていき、すでに席に座っていた戸倉さんがヒラヒラと手を振っていた。

「さっきはどうも。こいつちゃんと誘えてた?」

ニコニコしている戸倉さんが、私を見るから首を傾げる。

あの言葉はお誘いだったのかな。
ある意味でお誘いだったのかもしれないけど……。

「大丈夫でしたよ。ちゃんと誘えていました」

「リリちゃん優しい。でも、ミホちゃんを連れてきてくれてありがとう」

ああ、戸倉さん、美保狙いなんだ。

「俺、髪フェチでさー。美保ちゃんカットモデルしない?」

座った途端にそんな事を言われて、私たちはぎょっとした。

「か、髪フェチ……ですか?」

いきなりフェチズムを暴露してくる戸倉さんに面食らったのか、さすがの美保も少し驚いて目を大きくして、あえぐように聞いている。

「うん。街コンって、案外話す時間がないよねー。だから、端的に話すことにするけどさ。美保さん童顔なのにワンレンはないよー。似合わない」

チャラくにこやかに、ズバリと美保のコンプレックスを刺激した。

美保は童顔をめちゃめちゃ気にしている。
何より、自分の見た目に寄ってくる男という男はロリコンだと思っている。

中身は大変キツいのに。

「戸倉さん……大きなリボンが似合うとか、フリフリのワンピース着てとか言わないですよね?」

半分睨むようにしている美保に、今度は戸倉さんが目を丸くして驚いた。

「え。それが君の趣味ならそれに合わせてカットするけど……今の髪型じゃあ、頑張って大人に見せようとしている中学生にしか見えない」

中学生……。
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