どうすればいいのかわかりません!
「戸倉さんて、すっごーく失礼な事を言っているって気づいてます?」

「うん。でもさ、こんな凝縮された時間しかないなら、それも仕方ないかなって思えてきた。俺ら街コン初参加なんだけどさ、もっと時間があるなら、もっとうまいこと言えるかもしれないけど……」

そう言って、戸倉さんはちょっと言葉を止めて考える。

「ああ……でも無理かな。ミホちゃん、けっこうキツい性格してそうだから、結局、俺は怒らせるだろうな」

そんな事をニコニコと言うから、美保とふたりでポカンとして、それから同時に吹き出した。

いや、もう。なんて言いますか……。

その凝縮された時間の中で、これだけインパクトを残せる方が凄いです。

「こ、言葉を選んだ方がいいと思います!」

「一応、選んではいるんだけど」

言い合いを始めたふたりを眺めながらクスクス笑っていたら、今度は工藤さんが無言でお皿を突きつけてきた。

「どうぞ……」

「あ、ありがとうごさいます。さっきのケーキも美味しく頂きました」

「はい。見てました」

……見てました?

お皿を黙って受け取り、まじまじと工藤さんを見る。

「見てたんですか?」

「はい。ずっと見ていました。途中から何も召し上がっていませんでしたから、大丈夫だと思います」

……何が大丈夫なのか伺いたいところだけれど、聞いてしまうと変な答えが返ってくるような気もする。

どうしようか考えて……違うことを聞いてみることにしよう。

「工藤さんは会社勤めなんですね。私もそうなんです。営業部の事務なんですけど」

「事務の人がいないと会社は成り立ちません。僕は……そうですね。マーケティングに携わっています」

「へえ~」

印象はやっぱり固いけど、緊張する程でもない。
変わった人の印象はぬぐえないけど、案外続く会話も楽しめる。

工藤さんて“面白い”と言えば、面白い人だなぁ。

そうしているうちに時間がきて、街コンは終了した。
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