四百年の誓い
 それから二人は、中庭に降り立った。


 散り始めた桜の木々から、まるで粉雪のように桜の花びらが降り注ぐ。


 美月姫の周りで、花びらは華麗に舞っていた。


 「綺麗ですね」


 美月姫は手のひらで花びらを捕まえた。


 「高校生の頃、携帯で桜を撮影していたら、先生に話しかけられたのを思い出します」


 あの頃は眼鏡に三つ編みで、近寄りがたい優等生の印象だった美月姫。


 今は長い髪を風に揺らし、当時よりはかなり成熟した雰囲気を醸し出している。


 春色のジャケットも軽やかに。


 (いつまでも見守っていたい)


 圭介はそう願ったのだけど。


 「悪い。午後からバドミントン部の練習試合なんだ。引率してやらなきゃならない」


 この日は美月姫がアポなしで訪れたのだが、圭介は午後から予定が入っていた。


 「気にしないでください。私が勝手に押しかけただけですから。もう少し桜を見てから帰宅します」


 「まだ数日間、こっちにいるんだろ? また時間あったら遊びに来いよ」


 圭介はそう言い残して、生徒の待つ部室へと消えていった。
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