四百年の誓い
 「綺麗……」


 美月姫は一人、学園の中庭を巡っていた。


 舞い散る桜の花びらに導かれるかのように。


 ひらひらと絶え間なく、そしてとめどなく舞い続ける花びら。


 綺麗で美しいのに、悲しみに包まれてしまうのはなぜだろう?


 止められぬ時の流れの残酷さに、胸が押しつぶされそうになる。


 涙が流れ出しそうになる。


 その時だった。


 「!」


 突然辺りを、つむじ風が襲った。


 花びらは舞い上がり、視界が塞がれる。


 まるで真冬のブリザードのごとく。


 風が収まったのを確認して、ゆっくりと目を開いてみた。


 視界が開けてくる。


 木々の向こうから、誰かが近づいて来る。


 「うそ……!」


 美月姫は我と我が目を疑った。


 そこにいたのは……。


 「清水……くん?」


 「大村さん? 久しぶり……」


 一年ぶり。


 あの頃よりも少しほっそりして、そして大人びた表情。


 だが紛れなく、それは清水優雅だった。


 記憶から消すことがついにできなかった、かつて好きだった人。


 忘れ得ぬ人。
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