四百年の誓い
 美月姫は悔しかった。


 優雅の前に立つには一人の女、いや人間としては認められず。


 結婚までの遊び相手としか許されないことに対して。


 「……」


 今何か口にすると、悔しさのあまりとんでもない暴言を吐いてしまいそうな気がして、ためらっていた。


 今度こそ、後ろに控えるあの秘書に殴られるかもしれない。


 もしかしたらピストルとか持っていたりして。


 あのボブサップも……。


 「君がおとなしくしていてくれることに対して、もちろん報酬は準備するよ」


 美月姫の心を見透かしたかのように、丸山は穏かな口調で提案をしてきた。


 「報酬?」


 「たとえば君の父上。勤務先の収益が上がるよう、私が商工会議所などに働きかけることは可能だ」


 丸山の圧力で、周囲が父の勤務先との取引を避けている現状。


 圧力が消滅し、逆に取引を推奨してくれば……状況は一変する。


 「そして母上も。父上の給料が減ったために、君の学費捻出のために児童会館でパート勤務しているようだね」


 次は母に言及してきた。


 「今後はパートの給料を、生活費としてではなく、趣味のために使えるようにしてあげるのが、何よりの親孝行だとは思わないか?」
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