四百年の誓い
 「お嬢さんも大学卒業後は、就職先が必要だろう? おとなしくしてくれていたご褒美に、立派な就職先を紹介するよ」


 そして、


 「結婚を望むなら、お嬢さんに相応しい結婚相手だって、私のコネでいくらでも見つけてやれる」


 懐柔するつもりか。


 美月姫はあれこれ考えた。


 (このまま私もおとなしく、丸山サイドのいいなりになっていれば……。親も助かるし私の将来も保障される)


 親も経済的に楽になるし、美月姫自身の将来もまた。


 就職難のこのご時世、美月姫属する文学部は最も困難を極める部類だった。


 丸山のことだ、きっと素晴らしい就職先をコネで斡旋してくれるのだろう。


 そして正規のルートではまず実現困難な、立派な家のご子息とのお見合いの話を持ってきてくれるという。


 「……」


 美月姫にも打算・計算はある。


 黙って丸山の話に乗れば、人生は保障される。


 でも……。


 その代償に、優雅を手放さなければならない。


 優雅が旧華族のお嬢様と結婚するまでは、一緒にいられたとしても。


 その後は優雅の将来の邪魔にならないよう、身を引くことを余儀なくされる。


 どんなに好条件を積まれても、美月姫は絶対にそれだけは受け入れられなかった。


 まさに、「お金では買えない夢」。
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