四百年の誓い
 「私もいくら息子のためとはいっても、そんな物騒な手段には出ないぞ。自分の政治生命に終止符を打つような真似は」


 そして念を押す。


 「ただし、優雅をそそのかすなどして、私から二人で逃げようとしたら……。話は別だ」


 最後に念を押してきた。


 「うちの若い連中も、優雅の交際相手がどんな娘なのだろうか、非常に関心を持っていてね」


 「……」


 「お前も日本人の可愛い子は大好きだよな。なあ?」


 丸山はボブサップに話しかけた。


 日本語で告げた後、耳元でそっと英語をつぶやく。


 まだ日本語が不自由なボブサップのために。


 「ワタシ ハ ニホン ノ オンナノコ ダイスキ デス」


 片言の日本語でボブサップは答えて、美月姫に向かってにっこり微笑んだ。


 案外無邪気な微笑で、黒い肌に対する白い歯のコントラストが印象的だった。


 ……そんなことに感心している余裕は、美月姫にはなかった。


 言うことを聞かなければ、取り巻きの連中に襲わせるぞ……と、丸山はほのめかしているのだから。
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