四百年の誓い
 「幹事長、そろそろ」


 ボブサップの隣に立つ眼鏡の秘書が、腕時計を見ながら丸山に告げた。


 「ふむ、そろそろ行かねばな。……ところでお嬢さん、最後に確認だが。まさか妊娠はしていないだろうね」


 「そんなこと! あり得ません」


 美月姫はさすがに恥ずかしくて、目を逸らした。


 「男を騙して計画的に妊娠し、既成事実を設けた末に結婚を企む、けしからん女も多いからね。君もそんなことを企ててているとしたら、無駄だぞ」


 「どういう意味ですか」


 「出産は認めない。優雅は今後政界に羽ばたく、新たな時代のヒーローだ。そんなヒーローに隠し子がいるとなっては、イメージダウンも甚だしい。交際は黙認するが、妊娠出産は断じて認めない」


 「……」


 「せっかく授かった愛の結晶を摘み取るなんて、そんなむごいこと君も望まないだろう? だったらそういうことにはならぬよう、万全の注意を払うんだ」


 自分は紫との間に優雅を設けているのに、と美月姫は不公平感を拭えない。


 「優雅は福山旧侯爵家令嬢との縁談が進んでいる。隠し子騒動が発覚し、福山家に不信感を与えるわけにはいかない」


 旧侯爵家との縁談成立に向け、さすがの丸山乱雪も少々ナーバスになっているようだ。
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