四百年の誓い
 「このチーズケーキのチーズは、私の実家の製品だ。実家っていってももう両親は亡くなっていて、現在実家の牧場は兄の子、つまり甥が継いでいるんだけどね」


 メインディッシュを食べ終わり、ミックスベリーのシロップのかかったレアチーズケーキを食べていた時、


 「丸山牧場の乳製品は、優れた品質なのもあるが。私の名声と相まって、この辺りの高級料理店では優先的に用いられている」


 丸山幹事長は実家の話を続けていたのだが、突然、


 「君は、生まれは札幌のようだね」


 「はい、小学校の途中までは札幌でした」


 答えるまでもなく、美月姫の経歴は興信所、丸山の雇った探偵により調査済みだ。


 「そうか、都会生まれか。私は函館近郊の生まれでね……」


 続いて丸山は、自らの生い立ちについて語り始めた。


 優雅からもちらっとは聞いていたが、具体的な情報はなかった。


 マスメディアなどで、「貧しい生まれから一代にして出世を遂げた、稀代のサクセスストーリー」などと持ち上げられているのをたびたび見聞きはしていたが。
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