四百年の誓い
 「独裁者とは、私みたいな人種のことかね」


 「……」


 「まあ、否定するつもりもないが。だが私は、私利私欲のために権力を掌握したわけではない。物事を進めやすくするためだ」


 「独裁と単独行動との境界線は、微妙です」


 「確かに。だから常に自らを戒めていなければならない」


 そこまで話して丸山は店員に合図し、新たにワインを要求した。


 「君も、かなりいけるのだろう? 優雅とかなり一緒に飲んでいるようだし」


 「……普通です」


 美月姫の言動も嗜好も、ほとんどが丸山に伝わっているようだ。


 二人のグラスに赤ワインが注がれた。


 「……そんなわけで私は、念願かなってこの国の権力の頂点に立つことができた。だが問題はこれからだ」


 「これから、とは?」


 「日本人男性の平均寿命は、80歳弱。私にはあと20年も残されていない。私が死んだ後、私が一代で築いた王国はどうする? 誰かに継承してもらう必要がある」


 「それには……優雅くんが相応しいと?」


 「そうだ。優雅ほどの能力を持った者は、他にいない」
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