四百年の誓い
 「それでは」


 「あ、待ってください」


 車のドアが閉まる直前、美月姫は丸山を呼び止めた。


 「何だね」


 車に乗り込もうとした幹事長は、振り向いた。


 「その……。優雅くんのお母さんのことです」


 「紫の? 紫がどうかしたかね」


 「幹事長は紫さんのことを、物分かりのいい女とおっしゃいましたね」


 「ああ。余計な要求もして来ないので、非常に助かっているよ。あれは申し分のない女だ」


 幹事長は紫に関しては、安心し切っているようだが、


 「紫さんは、物分かりがいいのではありません。いいふりをしているだけです」


 「……というと?」


 「紫さんは、幹事長の思いに応えるため、無理に無理を重ねてらっしゃいます。だから春先の自殺未遂騒動も」


 「ガキのくせに、余計なことを口にするな!」


 横に立っていた京が、美月姫の発言を食い止めようとした。


 「いいんだ京。お嬢さんの言い分を、最後まで聞かせてもらおう。人々の声に耳を貸すのが、政治家の使命だ」


 「幹事長、」


 京は退いた。
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