四百年の誓い
 「紫が無理していると言ったな」


 「はい……」


 「どうしてそう感じたんだね?」


 「それは……」


 「彼女には私の交際相手、それに何より優雅を生み育ててくれた礼として、何不自由ない生活をさせているが」


 美月姫の言葉を遮るように自らの主張を押し出してくる丸山幹事長。


 「経済的に満たされていても、幸せになれるとは限りません」


 「全く、一言多いガキだな」


 京は美月姫の発言をことごとく非難するが、幹事長は大して意に介していない様子。


 「今後も可能な限り、優雅は紫と会わせてやろうと思う。立場上あまり堂々とはできないが。……貧しさゆえに愛する者を手放さなければならない苦しみに比べれば、全然ましだと思うが。たとえば昔の私のように、」


 そこまで言いかけて、丸山は口を閉ざした。


 丸山には過去に、貧しさに起因した何かつらい体験があったのかもしれない。


 美月姫は直感した。


 だが問いかけても何も答えてはくれないと思い、美月姫はそれ以上は訊かなかった。
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