四百年の誓い
金色の月
***


 北海道の短い夏が、刻一刻と過ぎていく。


 今年の夏休み、優雅とあちこち旅行とかしたいと夢見ていた。


 春に再会して、気持ちを確かめ合って以来始めて迎える夏。


 夏休みの思い出に、してみたいことはたくさんあった。


 ところが。


 「ごめん。幹事長が勝手に予定を作っていて」


 「仕方ないね……」


 人生全ての権限を幹事長に掌握されている優雅は、逆らうことができない。


 統一地方選挙直前ゆえ、その下準備として必要な地方巡り。


 優雅はそれを、将来に備えて政治の現場に触れさせてもらっていると思い込んでいるが。


 実は美月姫との仲を引き離すための、幹事長サイドの策略の一環。


 優雅が派遣される先が、美月姫のいる函館には非常に行きにくい場所ばかり。


 元々北海道は海に隔てられているが、さらに空港などのアクセスが悪い場所にばかり、優雅は派遣される。


 思い立って、ふらりと美月姫の元を訪れるのは困難な地域が大部分。


 「早く美月姫に会いたい」


 優雅のそのつぶやきに、美月姫は応えることができない。


 自らもまた、幹事長の思惑の方翼を担わなければならないのだから。
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