四百年の誓い
 「乗って」


 学校内の来客用駐車場に、優雅はこっそり車を停めていた。


 「清水くん、もう免許取ったんだ。そして車も・・・」


 車ももう買ったんだ、そう口にしようとして、止めた。


 普通の若者には手の届きそうもない、高級国産車。


 排気量もかなりあり、自動車税も高そう。


 東大入学祝いとか、免許取得祝いという名目で、父である丸山乱雪が買ってくれたんだろうことは容易に想像がついた。


 「……何を考えてるか、だいたい想像がつくけど」


 車のロックをキーで解除しながら、優雅は述べた。


 「この車、俺のじゃないよ。函館滞在中は水上に手配してもらった、この公用車を借りている」


 よく見ると函館ナンバー。


 「な、なるほど。あまり若者が選ぶような、デザインじゃないもんね」


 どちらかといえば大会社の偉い人や政治家などが好むような、重厚なボディ。


 優雅は美月姫が乗り込んだのを確かめてから、助手席のドアを閉めた。


 シートは自宅の父親の車とは大違い、まるで雲のようなフィット感だった。


 若者には似つかわしくないグレードの車を、優雅は慣れた手つきで運転する。


 (ただ運転は、吉野先生のほうが上手だったかも)


 向こうは免許を取ってからもう20年になるベテランなので、初心者マークがまだ消えていない優雅と比べるのは酷かもと美月姫は考えた。
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