四百年の誓い
 「うちの母親、ほとんど料理をしない人だから。家の中に食べ物がほとんどない」


 昔、店を開いた頃は自慢の手料理で、たまに訪れる丸山乱雪をもてなしたりしていたようだが。


 店が大きくなった今は、自身は接待など客のもてなしに専念して、料理は店で雇った板前に任せているようだ。


 そこで余分に作ってもらった料理を、優雅のために持ち帰って食べさせていたらしい。


 ……片付けが一段落すると、優雅は冷蔵庫を開けて食べ物を探した。


 酒のおつまみ類しか見当たらず、それらと缶ビールを優雅は美月姫の座るソファーの前のテーブルに持ってきた。


 「来る途中何か買ってくればよかったね。私、買い出ししてこようか?」


 財布を持って立ち上がろうとする美月姫を、優雅が止めた。


 「この部屋、出入りが面倒だから。……そうだ、出前を取ろう。お寿司大丈夫?」


 マンションと提携しているお寿司屋さんに、優雅は電話をかけた。


 数十分後来訪チャイムが鳴り、優雅は一階まで取りに行き、代金を払ってきた。


 届いたお寿司は、美月姫にはなかなか馴染みがないような高級寿司店の特上。
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