四百年の誓い
 「昨日はびっくりしたな。いきなり携帯に見慣れない番号から着信があったと思いきや、幹事長だったんだから」


 父は缶ビール片手に語り出した。


 「ひどく丁寧な口調で、いきなりだが美月姫をホームパーティーに招いていいかって、許可を得てきたんだ。そして夜遅くなってからも、遅くなったのでログハウスに泊めさせることにしたってわざわざ詫びの電話を入れてきた」


 「幹事長は……、万事においてまめな人だから」


 美月姫はそうとしか言えなかった。


 「そうだな。まさか本人が電話をしてくるなんてほんと驚きだ。ああいうのって秘書とかに全部任せるんだって思ってたよ」


 以前は支持政党や政策面の問題で、アンチ丸山だった父親。


 最近間近に接するようになって、丸山に対する印象もだいぶ変わってしまったようで……。


 楽しそうに丸山乱雪の話題に興じている。


 (私がおとなしくしてさえいれば……、父も母も幸せにすることができる)


 改めて感じた。


 意向に従い続けさえすれば……丸山幹事長から十分な「報酬」ともいうべき、幸せな未来が得られるはず。
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