四百年の誓い
 「美月姫、そういうのを干物女っていうんじゃない?」


 そうめんを食べ終え、居間に戻った後。


 ソファーに寝転び、枝豆をつまみながら週刊誌を読んでいる娘を見て、母は苦笑した。


 色のはげたTシャツにハーフパンツ、素足。


 髪の毛はひっ詰め、ノーメイク。


 優雅や丸山一族の前ではこんな姿見せられないが、家族の前ではどうしてもリラックスしてしまう。


 しかも読んでいる雑誌は、「週刊夕日」。


 時事問題が取り上げられた、どちらかといえば両親世代が読むような雑誌だった。


 一人暮らしをしていると、なかなか雑誌を購入する余裕が無いので、自宅にいる際はこうして……。


 「!」


 ちょうど巻頭記事として、与党幹事長・丸山乱雪のことが取り上げられていた。


 改めて読んでみると、最近丸山の活動が活発化しているとのことだ。


 税制改革、社会制度の変革。


 世の中をよりよくするためとはいえ、今ある制度を変えようとすると、既存勢力の猛反対を食らうのは明々白々。


 国会内で法案が通過するか、いやそれ以前に与党内の勢力をまとめられるか。


 いくら権力者とはいえ、急激な社会改革を目論む丸山乱雪の強引なやり方に、美月姫ですら不安を覚えたのだった。
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