四百年の誓い
 ……。


 いつの間にか美月姫は、ベッドの上でうとうと眠りに落ちていた。


 朝からずっと大学で講義やゼミに追われていて、休む間もなく優雅との待ち合わせに向かい、疲れていたのかもしれない。


 眠りの中、徐々に視界が明瞭になってきた。


 (地位も富も何も要りません。私が望むのは、ただ一つ)


 (姫を取り戻すためには、私はこの手を罪で汚すことも厭わない)


 どこかから声が聞こえてくる。


 懐かしく悲しく、美月姫の心に染み込んで来る。


 あなたは誰?


 私は今どこに……?


 「……美月姫?」


 優雅に揺り起こされ、夢から覚めた。


 「もしかして、泣いてるの?」


 枕に顔を埋め、一筋涙を流している美月姫を優雅は覗き込んだ。


 「……何か嫌な夢を見ていたみたい」


 美月姫は涙を拭った。


 「どんな夢?」


 「分からない……。でもどうやら私のせいで、大切な人に罪を犯させてしまうという背景だった」


 「……ただならぬ夢だね」


 優雅もベッドに入ってきた。


 「で、その罪を犯した奴はどうなったの?」
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