四百年の誓い
***


 「今でも信じられないんだ。一方的に美月姫を置き去りにした俺を、一年以上待ち続けていてくれたことが」


 強く抱き合った後、ふとそんな会話になる。


 結果的には、そういうことになったけど。


 途中、一人の寂しさに心が折れ、側にいてくれた圭介に心が揺れ、身を任せようとしたこともあった。


 向こうが断固として美月姫の誘いに応じず、一線を越えることはなかったのだが……。


 (もしもあの時、先生が私の手を取ってくれていたら……?)


 今でも思う。


 (先生は分かっていたのかな。いずれ私たちがこうなることを)


 全て受け止めてくれそうで、最後は拒絶され、あの時の美月姫はそれなりに傷ついた。


 何もかも依存していた人から突然突き放され、別れを切り出されて。


 再び心細い日々が始まった。


 いずれ優雅は戻ってくると諭されても、それはあてにならない未来だった。


 ところが。


 「……また、何か別のこと考えてる?」


 隣の優雅はすぐに気づく。


 「別に。先月からすると、こんなの夢みたいだな、って」


 「そうだね」


 優雅はそっと微笑む。


 「自分で決めた道だったはずなのに、ずっと心の奥で引っかかっていた」
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