四百年の誓い
 「もう、会えないかもしれませんね……」


 満開を過ぎて散り始めた窓の外の桜を見つめて、美月姫はため息をついた。


 「きっともうすぐ連絡があるはずだ。もうちょっと待ってみるんだ」


 「そう言われ続けてもう何ヶ月どころか、卒業から一年も過ぎました」


 「……」


 「私、シスターになろうかな」


 「えっ」


 窓の向こう、桜の木々が多数植えられている中庭の奥には、学園を統括する修道院の建物が見える。


 男子修道院は別方向なので、ここから見えているのは女子修道院。


 そこに居住するシスターの中には、学園の事務室で事務員として働いている者も存在する。


 「シスターになるには、処女であることが絶対条件ではありませんよね」


 「ああ。夫が修道士となるのと同時に、妻が修道女(シスター)になるケースもあるからな」
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