ゾッとするホラー短編集
私たちは拓海の後を追って、

病院の長い廊下を全力で走った。






早くこの病院を

出なくては……。






きっとこの病院は、

呪われているんだ。






私たちは、ここに来ては、

いけなかったんだ……。






私は拓海の背中を見つめ、

自分の心にのしかかってくる

恐怖をぬぐい去りたくて

夢中になって走った。






早く家に帰ろう……。






ただ、そのことだけを

思って……。






「マジかよ!」






拓海は廊下の角で立ち止まると、

焦った様子で、大声を上げた。






「こっちは行き止まりかよ!




みんな悪い。




病院の出口は、

逆方向だったみたいだ……。




オレたちは、今からもう一度、

元の場所に戻らなくちゃ

ならない……」






拓海が息を弾ませながら、

私たちの方を振り返り、

ひきつった顔でそう言った。






私たちは拓海の言葉を聞いて、

どうすればいいのかも

わからずに、

立ち止まって、

荒い息を整えた。






〈 今、来たこの廊下を

また戻っていくの?




拓海くんのバカ!




そんなことをしたら、

私たちは…… 〉






私がそう思って、

次から次へと流れ落ちる

汗を拭ったとき、

拓海が急に 表情を変え、

叫んだ。






「み、みんな……。

う、うしろ……。

後ろ!」






拓海の緊迫した声に、

私たちは拓海の指さした場所に

目をやると、

そこには白いブラウスの

胸の部分を

血で赤く染めた

あの女の子の幽霊が、

私たちの行く手を遮るように

立っていた。
< 30 / 279 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop