天使の梯子
「いってぇ」
「なにが痛いだ。楓の方がもっと痛かった。直哉、お前……殺すぞ」
地を這うような低い声に思わず立ち上がる。
「覚悟しろよ、直哉。本気で生きて帰れると思うな」
ひっと息を呑んだ直哉さんの声に、諏佐さんの言ったその言葉に思わずドアを開けて飛び出す。
「だ、だめ!」
床に座り込んで、口から血を出してる直哉さんが布団で身体を隠して出てきた私を見て驚いて目を見開く。それから、拳を振り上げたままの諏佐さんを見上げる。
「暎仁、お前……。三十二歳にもなって、少し押さえろよ。下手したら犯罪だぞ」
「うるさい、お前に言われたくない。楓、出てくるなって言ったのに」
拳を下ろした諏佐さんが、浅井さんから隠すように私を抱きしめる。
すごい、見たこともないくらい怖い顔してた。あ、悪魔みたいだった。
「私と直哉さんの間になにがあってもどうでもいいとか言ってたのに。こ、殺すとか言うから……」
そう言うと諏佐さんの顔が険しくなる。あ、また悪魔に近付いてる。