続★俺だけの家政婦さん
野末くんは担当さんをちらりと見ると感情のない声で

「名前なんだっけ?」と言った。

「やだ~~!先生ったら~冗談きついですよ~。安田、
安田麻衣子ですよ~」

担当さん・・・いや、安田さんは野末くんの冷たい一言に一瞬顔を強ばらせるも

またも笑顔を作った。

しかし、私はここにいていいのだろうか。

「あんたさ、仕事できないよね」

またもや冷たい一撃が襲う。

「はい?」

さすがのスマイル安田さんも今の一言には動揺を隠せない様子だ。

「俺、朝原稿送ったよね。あんたさ、ここまで来るのにどうやって、どのくらいの
時間を使った?わざわざ感想を言いに来たなんていうのは
単なる口実であって、仕事じゃないよね。サボりだよね」

「そ・・そんなサボりだなんて」

安田さんから笑顔が消えた。

「サボり以外なんなんだ?あんたがここで油売っている間他の編集者は
 時間と戦いながら仕事してるんじゃないの?こんなことして
いつかカラーページを自分が担当できると思ってんの?」

野末くんの言っていることは間違ってはいない。

言い方はキツいけど、DAYSは女性に人気がある雑誌だし、そういう雑誌の

編集に携わっているって同じ女性として憧れる。

だけど、彼女を見てると

こんな人たちが作ってんの?って思っちゃうよね。

どんなに周りが頑張っててもね・・・

安田さんは唇を噛みしめながら今にも泣きそうな潤んだ瞳で

野末くんを見ると小さな声で「失礼します」と頭を下げた。

野末くんは何も言葉を返さずテレビに視線を向ける。

安田さんは鞄を掴むとなぜか私の方を見た。

何だろう何を勘違いしているのだろうか、凄く睨まれてるというか

敵意を感じると言うか・・・

私はどうしたらいいのかわからなかった。


単なる家政婦なのにね・・・
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