理想は、朝起きたら隣に。
不機嫌そうにネクタイを緩めながら現れたのは彼だった。
私には視線も向けずに林田さんの横から注文をする。
「はあ? んな酒メニューにねーよ。すいません、ピーチウーロンもう一つ追加で」
「ぷぷ」
慶斗がピーチウーロンを飲む姿が想像できなくて思わず吹きだしたら、林田さんは自分のトークが受けたのだと気分を良くしていた。
「ビンゴ一位になったら、デート誘っても良い?」
「あはは、えっと」
「彼氏とかやっぱいるの?」
「い、いませんけどその」
隣の慶斗にお構いなしで私に話しかける林田さんが、ちょっと強引でどうしようかと笑って誤魔化してしまう。
「あの、友人が皆さんと話したがっているので、皆で話しましょう」
「え、遠まわしに断らないで」
番号だけでも教えてと言われたけれど、適当に誤魔化して先に出されたお酒を受け取ると、林田さんに会釈だけしてそそくさと逃げ出してしまった。
慶斗は林田さんの向こう側でずっとカウンターの方を向いていた。
話しかけてくる様子はないから、他人のふりをしているのかもしれない。
本当に私が誰か気付いていないのかもしれない。
けれど同じ空間にいるだけでこれだけ気まずく息が苦しいのかと思ったら、胸が痛かった。