「ただ、隣に居たいだけ。」

「おかえり、翔ちゃん。」

2階から下りてきた未空は、俺の姿を見付けて、何か聞きたそうに服の袖を掴んでくる。

「ん?」

もうちょっとで終わるから待ってて。と言ったのに離してくれない。

仕方なく向き直ると、未空は俺じゃなくて水と泡に浸かっている弁当箱を見ていた。


「……美味しかった?」

下を向きながらも袖を掴み続ける。

「スゲー旨かった。」

ぱああぁっという効果音が聞こえるぐらい嬉しそうに顔を上げた。

〝また作ってよ。〟そう言うと、大きく頷き微笑んでくれた。


これからも〝兄妹〟として仲良くしていけるって心から思った。


_____そう思っていた。

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