「ただ、隣に居たいだけ。」

「ちょ、直人!? 行くってどこに…」

腕を掴まれたまま、こっそりと〝二人〟に見つからないように隠れる。

これは、まずいだろ。

「帰ろうぜ。」

〝兄〟として〝妹〟のデートのあとを、こっそりつける、なんて出来ない。

それ以上に、見たくない___……


「逃げんのか?」

帰り道の方向に歩き出そうとした瞬間、直人の、ハッキリとした〝言葉〟が刺さった。


「帰るってことは、少なからず見たくない気持ちがあるってことだろ? 自分の気持ちをハッキリさせるためにも、行こうぜ。」


____見たくない、気持ち。

〝好き〟違いなら確かめたい、と思った。


それからは、今まで気付かなかったことに気付くことばっかりだった。

可愛い服も。 可愛い髪型も。

照れたように笑う表情も、なにもかも見たことなくて___。


小さい頃、手を繋いだことはあるけど
いつの間にかあんな風に笑うようになってたんだ……

〝お兄ちゃん〟と手を繋いでる〝妹〟として楽しくて〝笑ってる〟だけじゃなくて〝好き〟だから〝照れ笑い〟をしてるのが伝わってきて今までにない痛みを感じた。

〝チクン〟とした痛みじゃなくて
〝強く〟締めつけられる痛みが走って、これ以上、見てたらもう___……

涙ぐんでるのを隠すかのように逃げるように走って家に帰った。
< 17 / 36 >

この作品をシェア

pagetop