「ただ、隣に居たいだけ。」
〝お母さん〟だと思っている未空は、扉を開き、俺を見てビックリしていた。
そして、すぐに勢いよく閉められた。
いつもなら帰ってきてない時間だから無理もないけど、さすがに今のは傷付くよー?
「未空ー?」
溜め息をつき、扉の向こうに再びノックしながら呼び掛ける。
「……いで。名前、呼ばないで。」
怒っているように聞こえる大きな声。
―――……えっ?
〝嫌い〟という言葉が頭をよぎった。
想像もしてなかった返事に痛みを感じた。
でも知りたかった。
何で……理由を教えてほしかった。
この〝家〟に住むことになって
驚きながらも迎え入れてくれた日みたいに無邪気な笑顔を見せてほしかった。
「……言ったから。」
「えっ?」
いつの間にか扉の前で崩れていた俺に、ゆっくりと囁くように届いた声。
「…先生と生徒だって言ったから。」
「それはっ………!」
初めての〝先生〟だし、なにより同じ学校で〝同じクラス〟なんて思わなかったし。
昔から知ってるとはいえ、生徒と同じ家に住んでるのは……さ。
一生懸命やりたい。
ただそれだけだったんだ。