ベタベタに甘やかされるから何事かと思ったら、罠でした。
次の日、朝のニュースで言っていた天気予報によると今日は一日晴れ。それをぼんやりと聞きながら、春海さんに折り畳み傘を返し忘れていることを思い出した。朝のうちに返してしまおうと思って鞄に入れたまま自分の部屋を出る。
管理人室にはいつもと変わらず春海さんがいて、彼は私に気づくなり小窓から小さく笑いかけた。
「おはよう、ひなちゃん」
「おはようございます」
「二日酔いになってない? 平気?」
「平気です。そこまで飲んでないでしょう?」
「そうだけど、結構フラフラだったからさ」
「そうですか……?」
会話しながら、そっと小窓越しに傘を返す。「ありがとうございました」と言って渡すと「あぁ、うん。ごめん荷物だったね」と苦笑して彼はそれを受け取った。
「ひなちゃんさ、酔うとちょっとしゃべり方甘くなるよね」
「いや……わかりません、そうなんですか?」
「うん。ちょっと舌足らずになるの。それがすごくかわいい」
また飲ませよー、とご機嫌に笑う春海さんに送り出されてマンションを出た。