ベタベタに甘やかされるから何事かと思ったら、罠でした。
通勤電車に揺られながら思う。自分にそんな癖があったとは知らなかった。それならば、新田さんと食事をして少しお酒を飲んだ私は、彼の前で少しでもかわいくなれているんだろうか?
今の鞄の中は、折り畳み傘がなくなって少しゆったりしている。昨日渡せなかった新田さんへのプレゼントが堂々とそこに居座る。
「……渡せるかなぁ」
昨日までしつこかった父からの着信もメールも今日はぱたりと止んでいた。この分だと新田さんは今日、総務人事部にはやってこないかもしれない。本人にはあれだけ突っぱねておいてなんだけど、父と暮らしていたマンションを出てしまった今、約束以外で会えるとすれば社内くらいだった。
ちょうど電車を降りて、会社に向かって歩きだしたときだ。
鞄の中でスマホが震えた。また父か……と思いつつ一応ディスプレイを確認すると、そこには“新田さん”の表示。私は慌てて応答ボタンを押した。なるべく落ち着いた声を心がける。