ベタベタに甘やかされるから何事かと思ったら、罠でした。

今日はできることなら、お酒の力を借りてずばっと訊いてしまおうかと思った。何考えてるんですかって。私のこと本当に好きなんですかって。鬱陶しいと思われたくないからいつも口の中に留めてきた言葉を、ふっと吐き出したい気持ちだった。



きっとちょっと影響されてしまったのだ。素直すぎるくらいのあの人に。



春海さんはとっても自由だから。困るな、正直鬱陶しいな、と思ったりもするけど、羨ましくもあって。裏表のないストレートな好意は案外嬉しいものだってことにも気づいてしまって。

うん。

本当は昨日だってものすごく楽しみにしてたんだって、むくれてでもいいから素直に言えたら何か変えられるような気がする。鞄の中のプレゼントも、渡せそうな気がする。いっそ出会い頭に渡してしまう?

そう思って、喫茶店のドアに手をかける前に細長く平べったい箱を鞄の中から取り出した。ネクタイとカフスのセット。付けてくれるだろうか? ――わからない。でも。

ステンドグラスの入ったドアの、金のドアノブに手をかける。

少しだけ素直になろうと勇気を振り絞って、ドアを押し開いた。

< 49 / 72 >

この作品をシェア

pagetop