ベタベタに甘やかされるから何事かと思ったら、罠でした。

「……ひなちゃん」

「はい。……ごめんなさい」

「……ぶふっ」



私はきゅっとレバーを元に戻してお湯を止めながら、むっとして春海さんを見る。彼は顔を背けて、声を殺して笑うのを我慢しようとしていた。



「そ、れは……ずるいよ、ひなちゃん。間抜けすぎるよ……コントじゃん……」

「~っ、ありがとうございました! 解決しました! 今タオル持ってきますからもう帰っ……」

「ひなちゃん」



もう一度名前を呼んできた春海さんは、笑ったまま私の頬に指を伸ばしてきた。



「……なんですか、この手は」

「ねぇ。目が赤いことには触れないほうがいいの?」

「……そういう配慮ができるなら、そもそも尋ねないのが正解だと思いますけど」



指摘されてとっさに目元を拭った。ここまで春海さんが指摘してこないから、バレていないと思っていたのに。私は一人で、我慢できずに浴室で泣いていた。



「ごめん。あえて空気は読まないことを信条にしてる」

「……あえてでしたか!」



そいつは驚きだ! びっくりして涙引いた!
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