唯一の愛をキミに【完】
「…そっか。じゃあちゃんと好きな子が出来たときにまた教えてくれる?」


「あぁ。そのときを楽しみにしてるよ」


そう約束をして雅也の家を出たとき、鞄の中から携帯の着信音が聞こえて取り出すと由香里からの電話だった。


「もしもし?」


『もっ、もしもしっ!哲!大変っ!大変なの!』


「由香里、どうした?ちょっと冷静になれ。何があった?」


由香里の慌てた声に何事かと思い耳をそばだてる。


『哲!大変っ!唯ちゃんが律の代わりにわたしの撮影スタジオまでケータリングに来てくれたんだけど、わたしのモデル仲間が唯ちゃんの昔馴染みだったみたいで。それで、そいつが…哲のこと悪く言って唯ちゃんがそいつを引っ叩いてスタジオ飛び出しちゃって…連絡つかないんだ』


一瞬、頭が真っ白になる。


あの温厚で優しい子が俺のために他人を引っ叩いた?


『哲?』


「あっ、悪い…」


由香里の呼びかけにハッと現実に戻る。


すぐにでも唯を見つけに行きたいけれど、なんとか地に足をつけている状態で。


でも混乱している由香里を放っておくこともできない。
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