唯一の愛をキミに【完】
そんな現実を目の当たりにしたとき、俺の中である疑問が浮かんだ。


そんな男が唯に告白する資格なんてあるのか、と。


途端に怖くなる。


普通だったらこんな他の女が好きだと告げている男と一年間も付き合えるか?


唯は優しい子だから、言い出せないだけなのかもしれない。


もうとっくに俺に愛想を尽かしてるのかもしれない。


どんどんマイナスの方に脳が働き身体中の力が抜けると、唯と繋いでいた手が離れた。


「由香里ーーー」


どんな巡りあわせだろうか。


俺たちの目の前で由香里が一人で涙を流していた。


「あっ…哲。唯ちゃんも。デッ、デート?ごめんねっ、変なとこ見せちゃって!」


由香里は俺たちに心配かけさせまいとわざと明るく振る舞った。


「なにか、あったのか?」


「…充とね、別れたんだ!」


「撮影が急に延期になったから充の家に行ったら知らない子がいてさ!もう参っちゃうよ!だから引っ張いて別れてきた!」


充、まだあの浮気相手と切れてなかったのか。


由香里は引っ張くフリをして見せたけれど、我慢していることなんてすぐにわかった。
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