花盗人も罪になる
圭は彼が好きだから結婚したいし、彼の子供も欲しい。

だけど彼はそれを望んでいない。

結婚を望めば彼とは一緒にいられなくなるかもしれない。

きっと圭はこれまで何度も葛藤しながら彼との関係を保ってきたのだろう。

紫恵は圭の気持ちを考えると胸が痛んだ。


お互いが望まないと手に入らない物があれば、どんなに望んでも手に入らない物もある。

お互いが望めば手に入る物でも、どちらかが望まなければ手に入れることはできない。

世の中にはうまくいかないことが多すぎる。

「結局さ……誰がなんて言ったって、世の中なるようにしかならないんだよね。何もかも自分の望み通りになるなら、誰も悩んだりしないよ」

綾乃の言葉が、紫恵の心にやけに重く響いた。

何が幸せかなんて、本人にしかわからない。

それぞれに価値観が違って、自分が常識だと思うことが他の人にとっては常識ではないかもしれない。

今目の前にあるものが幸せだと思えるなら、多くを求めることはないだろう。

人間は欲張りな生き物だ。

最初は幸せだと思っても、慣れてしまえばそれが当たり前になって、それ以上の幸せを求めてしまう。


< 111 / 181 >

この作品をシェア

pagetop