花盗人も罪になる
円は運ばれてきたランチのチキンソテーを切り分けながら、相変わらずブツブツ言っている。

「新婚なのに別居って寂しいわね」

「うーん、そうでもない。夜には電話もくれるし、お互い離れてても前よりはずっと安心感があるよ」

「ふーん。せっかく結婚してもいつも一緒にいられないなんて、私はやだ」

恋愛体質の円らしい言葉だ。

きっと好きな人との激甘新婚生活を夢見ているのだろう。

「ずっとこのままってわけじゃないよ。大輔の仕事が落ち着いたら会社辞めてこっちに戻って来るし。一緒に暮らすのはその後かな」

あまりにもあっさりしている香織に、円は怪訝な顔をした。

「だったらそれから籍入れても良かったんじゃないの?」

「そうなんだけど……。大輔は事故にあった時に家族にしか連絡してもらえなかったから、一日も早く結婚したいと思ったんだって」

「結婚の決め手ってそんなもん……?なんか夢がないな」

「いいの、大輔に必要とされてるのがわかって嬉しかったから」

大輔が弱っている時にそばにいて欲しいと思った相手が自分だったことが、香織にはとても嬉しかった。

他の誰でもなく、大輔は香織を生涯の伴侶に選んだのだから。


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